シンジラレナーイ!

 ニュージーランドに日本ハムファイターズがやってきた。44年ぶりの日本一。その優勝旅行である。新庄や小笠原の不参加で注目度は低いと思われていたが、それでも地元の札幌からはNHKを除く民放各局が同行してきた。

 我々は報道ではなく、某キー局正月特番用の取材。いつもの日ハム担当取材陣の中にあって、日本人のディレクター(私)とドイツ人のカメラマン、NZ人のサウンドマンの組み合わせはかなり目立つ。実際、新聞記者らしき人から2度ほど「地元の取材の方ですか?」と声をかけられた。あわよくば記事のネタにしようとしたのだろう「いえ、◯◯テレビです」というと拍子抜けした感じで離れていった。

 それにしても、日本のメジャースポーツ取材のデリケートさは相変わらずだ。今回の我々の狙いはヒルマン監督の単独インタビューだったのだが、現場にいってみたら「そんな話は聞いてないのでダメ」。もちろん事前に取材申請はしてあった。しかし、現場まで話が通っていなかったらしい。とりあえず、日本に国際電話をかけて改めて担当プロデューサーから札幌の日本ハムの広報に確認を取ってもらう。しかし、今度は取材の内容に横やりが入る。「こういう取材は内容が事前に伝わっていないのでは難しい」。

 担当者が眉をしかめる「こういう」内容とはヒルマン監督が住んでいる地元のファイターズファンへの感謝メッセージである。確かに、一部に最初の挨拶だけ日本語で言ってほしいとか、決まり文句の「シンジラレナーイ!」を含めてほしいというリクエストはあるが、それだってどうしてもという訳ではない。欲しいのは共に今シーズンの日本一の喜びを分かち合ったファンへのコメントである。時間にしてどんなに長くても10分。何故、これがそんなに問題なのか。いや、本当は問題ではないのだ。理由はだいたい見当がついているが、ここではそれについては述べない。

 ただ、この相当にやばーい状況でもそれほど悲観的にならずに済んだのは、メッセージをもらおうとしているのが日本人選手ではなく、アメリカ人の監督だったからだ。とにかく、こちらの取材意図を誠意を尽くして説明し、ダメならダメであきらめるので本人に聞くだけ聞いてみてほしいと頼んだら、「・・話だけはしてみます」と担当者。すると、テレビと新聞の囲みのあとで5分以内なら、という条件付きで意外とすんなりオーケーが出たのである。

 プロフェッショナルとしてファンの存在を常に意識している監督であれば、この取材を断る理由は全くない。ヒルマン監督はメジャーの経験こそないが、プロの姿がどうあるべきかは知っている。監督がもし日本人だったらこうはいかなかったのかもしれない。

 さて、すったもんだの末の単独インタビュー。きっとヒルマン監督はさっきまでのあーだこーだのやりとりには関わってはいないのだろう。始まってみれば、リハの時間もなかった日本語のセリフや得意のシンジラレナーイも快く収録させてくれた。あっさり、取材終了。

 かくも日本のメジャースポーツの取材は難しい。

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